なぜ今、パーソナルデータ流通が重要なのか?Dot to Dot担当者が語る、サービス開発の背景。

BIPROGYが開発したパーソナルデータ流通基盤Dot to Dot。
「いつ、どこで、何を買ったのか・どのような場所に行ったのか」といった生活者のパーソナルデータを、自らの意思によって事業者間に流通させ、便利で豊かなサービスを受けられる世界を実現しようとしています。

果たして、なぜBIPROGYは、このようなパーソナルデータ流通に着目したサービスを開発しようと考えたのでしょうか。

そこで今回は、Dot to Dotの2人の担当者にインタビューを実施。

「なぜ今パーソナルデータ流通が重要なのか?」
「パーソナルデータ流通によってどんな世界をつくりたいのか?」

その開発の背景を語ってもらいました。

山本 史朗

BIPROGY株式会社
戦略事業推進第二本部
事業推進第二部
企業共創プロジェクト1G

1991年に大学を卒業後、日本ユニシス株式会社(現BIPROGY株式会社)に入社。Java黎明期よりアプリケーションアーキテクトとして、日本ユニシスの開発標準「MIDMOST for Java EE Maia」「MIDMOST for .NET Maris」の開発、適用、教育に従事。金融、流通、公共系の大規模システム開発案件に参画。現在は、データ流通による共創ビジネスを創出すべくパーソナルデータ流通プラットフォーム「Dot to Dot」を企画・開発してスマートシティ案件にて実証中。

佐藤 歌音

BIPROGY株式会社
戦略事業推進第二本部
事業推進第二部
企業共創プロジェクト1G

2021年大学卒業後、日本ユニシス株式会社(現BIPROGY株式会社)に入社。配属後から、パーソナルデータ流通プラットフォーム「Dot to Dot」の新規企画、並びに価値交換基盤「doreca」のイシュアー企業開拓に従事。2年目の今年度から本格的に「Dot to Dot」の販売戦略チームに参画しており、当サービスについて絶賛勉強中。

日本社会のDX推進にインパクトを与えたい

そもそもなぜBIPROGYは、「パーソナルデータ流通」に着目するようになったのでしょうか?

佐藤

私たちのパーソナルデータ流通への取り組みは、日本社会におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の課題と深く結びついています。

DXの課題、といいますと?

山本

そもそもDXとは、顧客や社会のニーズを起点にビジネスモデルそのものを変革していく取り組み。業務内容や組織風土、企業のあり方にも影響を与えるものです。しかし、現状の日本社会のDXは、その段階まで至っていません。

佐藤

コロナ禍で行政や企業もDXへの取り組みを進めていますが、まだまだこれから。DX以前のデジタル化につまずいていることも少なくありません。
たとえば、国民1人あたり10万円が支給された特別定額給付金。申請業務まではデジタル化されていましたが、給付業務はデジタル化が追いつかず、紙による申請を行った方がデジタル申請よりも早く入金される、ということも起きました。

山本

海外のビジネススクールが発表した「デジタル競争力ランキング(2020)」では、主要64ヶ国中日本は23位。同じアジア圏で香港が5位、韓国が8位となる中、大きく遅れを取ってしまっているんです。

そんなに日本はDXに遅れているんですね。

山本

さらに、DXを推進する上で大きな障壁になっているのが、プライバシーや個人情報の保護。デジタル社会の中で、個人の位置情報や購買履歴などは容易に収集されるようになりました。それらのパーソナルデータを活用すれば、一人ひとりのニーズに応じた利便性の高いサービスを開発しやすくなるでしょう。しかし、その中にはプライバシーや個人情報に関わるデータがあるのも事実。慎重に扱わなければなりません。

佐藤

理想は、ひとりひとりの利用者のニーズに寄り添ったサービスを安心して利用できる環境を提供すること。そのためには、パーソナルデータを使いたい。しかし、プライバシーや個人情報の壁がある……そんなジレンマがあるんです。ただ、逆の見方をすれば、このジレンマさえ乗り越えられれば、日本のDXを一気に推し進められる可能性がある。だからこそ、私たちは、パーソナルデータ流通に大きな可能性を感じています。

真に生活者が中心となる経済を実現するために

パーソナルデータ流通によってDXが進展すると、どのような社会が実現されるのでしょうか。

山本

ひとつは、「インテンションエコノミー」の実現です。

インテンションエコノミー?

山本

これまでは、企業が主体となってサービスを生み出し、生活者に対して「こんな商品やサービスがありますよ」とアプローチをかけていくマーケティングが主流でした。このような経済は「アテンションエコノミー」と呼ばれます。アテンションエコノミーの世界では、当たるか外れるかわからないマーケティングを続けるため、組織規模や資金力が大きい体力のある大企業しか参入できませんでした。
一方、インテンションエコノミーは、生活者の「こういう商品やサービスがほしい」という意思が先にある。そして企業側は、そのような生活者の意思に対して商品やサービスを提供するという構造になっています。

まだ、ちょっとイメージしづらいのですが……。

佐藤

例を挙げてお伝えしましょう。たとえば、生活者がレンタカーを借りるとき。広告や検索結果などを参考にひとつひとつレンタカー会社を調べていくのではなく、「○月○日から△日まで群馬県でキャンプに行くので四輪駆動のSUVを借りたい。給油は自分でやる。保険は不要。レンタカー会社より提案が欲しい」と問いかけ、レンタカー会社が競合するという世界観です。

なるほど。生活者も不必要に迷わなくても良くなりそうですね。

山本

インテンションエコノミーに変わると、大企業以外にも平等に生活者に価値を提供するチャンスが回ってきます。効果が見えにくい広告に予算を費やす必要もなくなり、提示された要望に的確に応えられるサービスや商品を磨き上げることにリソースを集中させることもできるでしょう。そうなると、生活者側も自分に合ったサービスや商品を得ることができるので、暮らしが便利で豊かになるんです。

パーソナルデータ流通の先にある、共創する経済

生活者だけでなく、企業にも良い影響があるんですね。本当にそんな社会が実現したらいいなと思うのですが、現状はどのような状況なのでしょうか。

佐藤

個人情報保護など、パーソナルデータの使い方に関する法制度は整備されてきています。また、個人からパーソナルデータを預かり、パーソナルデータを利用したい企業に提供する「情報銀行」という新たな取り組みも始まっていたり、データ提供者とデータ提供先を仲介する「データ取引市場」という取り組みも検討されてきたりしているんですよ。

山本

ただ、生活者のパーソナルデータ流通に対する不安を払拭することは、まだまだ大きな課題です。とある学生向け就職情報サイトが個人の内定辞退率を算出し、本人の了解を得ずに企業に販売して問題になったニュースを覚えている方もいることでしょう。「自分のパーソナルデータが、いつ、どこで、どのように利用されるのかわからない」……そんな不安を払拭しなければ、パーソナルデータ流通はなかなかむずかしいと思います。

佐藤

企業にとってもパーソナルデータは諸刃の剣になってしまっていると思っていて。パーソナルデータが貴重なビジネスの資源になる一方で、上記の就職情報サイトのように使い方を誤れば企業存続のリスクを背負うことにもなる。そのため、倫理や法務、運営体制、ITシステムなど大きな負担を強いられ、パーソナルデータの取り扱いに慎重にならざるを得ないのが現状です。

山本

また、仮にパーソナルデータが流通するようになっても、資本力のある事業者にデータが集約されてしまっては、望むべきインテンションエコノミーは実現しません。
あくまで私たちがつくりたいのは、資本力や企業規模に関係なく、より多くの企業が生活者の期待に応えられるサービスや商品を創出していく世界。そんな経済圏で重要になるのは、「競争」ではなく「共創」です。企業同士が手を組んで、お互いの強みを活かしていく。さらには、生活者も自らの意思で企業にパーソナルデータを提供し、より価値のあるサービスや商品の開発に貢献していく……そんな相互扶助の考えでつくられる経済圏を実現できたらと考えています。

Dot to Dotが実現する、パーソナルデータ流通。
その背景には、日本社会におけるDXへの課題意識、そして、企業と生活者の垣根を越えた“共創社会”の実現がありました。

次のコラムでは、実際にDot to Dotとは、どのような設計で、何ができるのか、その具体的な仕組みや実例をご紹介していきます。

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